高級食パンやメロンパン専門店など、パンにも時代によってさまざまなブームがあります。でも結局のところ、近所に人気のパン屋さんがあって、いつもおいしいパンを買える環境こそが、いちばん幸せなことなのかもしれません。十勝は芽室にも、そんなパン屋さんがあります。「フレッシュベーカリー旭屋商店」。昔から地元の人々に愛され、今なお進化し続けている、魅力たっぷりのお店なのです。
旭屋商店の創業は、1938年。十勝でいちばん古いパン屋さんです。もともとは燃料屋を経営していた創業者が、この燃料を使って何かできないかと考えた末、パンを作り始めたというのがきっかけのようです。
当時、パンはまだまだ珍しかったようですが、その味は地元にしっかりと根づいていきました。そして現在、三代目店主の中島将好さんと奥さまの瑞穂さんによって、受け継がれています。
店内に入ってまず驚くのが、種類の豊富さ! ショーケースの中に、いろいろなパンが所狭しと並べられています。
聞けば、レシピは全部で150種類ほどもあり、そのうち常時100種類ほどが店舗に出ているのだそう。どれもこれも、おいしそうな顔をしたパンたち。中島さんに、いくつかおすすめを教えてもらいました。
ズラッと並んだパンの写真と、価格を見て、何かお気づきでしょうか? そう、旭屋商店のパンは、どれも本格的ながらリーズナブルなのです。なんでも、店にあるほとんどの商品が100円ちょっとで買えるのだとか。「もっと気軽に、もっとたくさん、パンを食べてもらいたい」という中島さんの心意気が溢れています。
しかも、中島さんは地元食材にとことんこだわります。現在、店頭に並ぶパンのほぼすべてで使用されているのが、十勝産小麦。
近年は十勝産小麦が開発されてきており、それによってパン職人の技術力も向上しているといいます。中島さん自身も、その日の気候や小麦の状態によって、臨機応変なパン作りを心がけているのだそう。
たとえばこの甘納豆のパンは、小麦はもちろん100パーセント十勝産を使用。さらに十勝産の金時甘納豆をたっぷり詰め込み、ボリュームのある食べ応えが人気です。
中島さんが会長を務める「十勝パンを創る会」で開発された、オドゥブレ十勝もじわじわと人気が高まってきている商品です。原材料の十勝産比率はなんと95.97パーセントを占めるというから、十勝の食材の豊かさに改めて感服せずにはいられません。
さらには、通常の製パンなら60分ほど発酵させるところを、中島さんはイーストの量を調整することで12時間も発酵させるというから驚きです。これは長時間発酵させるほど旨味成分であるグルタミン酸が増えるからで、こうしたこだわりが、おいしい旭屋商店のパン作りを支えているのでしょう。
「この先は、糖質制限のパンや全粒粉を用いたパンなども開発していきたい」
と、目を輝かせる中島さん。十勝でいちばん古いパン屋さんは、十勝でいちばん進化を遂げてきたパン屋さんでもあるのかもしれません。