帯広の名物といえば、真っ先に豚丼を挙げる人も多い昨今。全国的な人気を誇る有名店も数多く存在します。トカチナベでは、そんな豚丼の名店をひとつずつご紹介。今回取り上げるのは「ぶた丼のとん田」です。もともと肉屋だったという先代が始めた、豚丼専門店。これがおいしくないわけがない! さっそく、お邪魔してみました。
とん田(とんた)で提供されている基本の豚丼は、3種類。豚丼のはじまりと言われている「ロースぶた丼」、赤身と脂身が層になった「バラぶた丼」、お肉が苦手な人でも食べられるという「ヒレぶた丼」、各780円(税込)です。常連さんともなれば、好きな部位がそれぞれにあるようで、来店と同時にサッサと注文していきます。ただし、初めて訪れる人や観光客は、迷っちゃいますよね。そんな時は、これ!
ロースとバラの両方が乗った、贅沢な盛り合わせです。調理時間の関係上、ヒレは一緒に出せないそうですが、お客さんの要望に応えて誕生したサービス品だというからありがたい限り。ロースもバラも食べたいという欲張りさんにも、うれしい一品です。
豚丼には、すべて味噌汁と漬物が付いてきます。さらには、タレの入った壺も。自分の好みの量だけたっぷりとタレをかけられるなんて、これまたうれしいサービスです。ちなみにとん田のタレは甘さが強く、子どもでもおいしく食べられる味付け。店の人気があまりにも高まったため、タレだけを製造する専門の会社を作り、先代は今やタレづくりに専念しているというから驚きです。
実はとん田は、2017年に現在の店舗に移転したばかり。前の店舗では、たとえば花火大会の日などはお客さんが押し寄せて6時間待ちにもなったことがあるそうで、広い場所を求めて移転してきたといいます。とん田の豚丼が、いかに人々を惹きつけて止まないかを象徴するようなエピソードです。
なぜ人々はとん田に惹かれるのか。それはやはり、先代がもともと肉屋を営んでいて、肉に精通しているということが大きな要因でしょう。肉へのこだわりは強く、十勝産の豚肉を使用することはもちろん、生肉をすべて手切りで仕込んでいきます。
1日トータルで100kgほども出るという肉を、前日にすべて手作業で仕込んでおくというから大変な手間です。現在は先代の元で5年ほど修行を積んだ2代目が切り盛りしているとん田ですが、先代から受け継いだ「豚丼を売るのではなく、手間暇を売れ」という言葉を胸に、機械などを導入することもなく、手づくりにこだわり続けています。
手間と時間をかけて作られる味は、お客さんにもしっかりと伝わるのでしょう。初めて訪れたお客さんも「また、とん田の豚丼が食べたい!」と思い、いつしか常連さんとなり、自分の好みやその日の気分で部位を選ぶようになっていくのかもしれません。シンプルだからこそ飽きがこない、豚丼の真髄をとくと味わわせてもらいました。