上士幌町には、いくつかのコンクリートアーチ橋があります。これらは旧士幌線の上士幌 から十勝三股間が開通した際に造られたもの。昭和62年に旧上士幌線が廃線になってからも、取り壊されることなくそのまま残されてきました。今回ご紹介する「タウシュベツ川橋梁」も、そうした鉄道橋のうちのひとつです。立地の悪さなどさまざまな理由から、保存措置を取られていないタウシュベツ川橋梁。ただ朽ちていくのを待つのみとなった現在、その姿を見て、私たちは何を思うのでしょうか。
タウシュベツ川橋梁が造られたのは、昭和12年。全長130メートル、11連のアーチから成る大きな橋梁です。輸送コストを削減するため、材料には現地で採れる砂利などが使われました。アーチ型が採用されたのは、強度の高さももちろん大きな理由ですが、音更川の美しい景観を損なわないように……との配慮もあったようです。
タウシュベツ川橋梁がその役目を終えたのは、昭和30年のこと。糠平ダムの建設に伴い、線路が移設されたのです。それにしても現在のタウシュベツ川橋梁は、他のコンクリートアーチ橋に比べて損傷が激しいといいます。実は橋梁のある糠平湖は、季節によって水位が大きく変動します。そのため、何十年という長きにわたって水没と出現を繰り返してきました。
また、言うまでもなく冬には厳しい寒さが襲います。コンクリートの内部に侵入した水は、季節ごとに凍結融解作用を重ね、内部からも少しずつ浸食していったのです。
加えて平成15年に起きた十勝沖地震で橋梁の一部が崩落。ついに強度が保てない状態となり、それ以来、橋梁自体に立ち入ることは禁止されています。
夏には湖に沈み、冬には氷と雪原の中に佇む……タウシュベツ川橋梁は、季節によってまったく異なる表情を見せてくれます。春から初夏にかけては水位によってめがね橋に見えることもあり、こちらも人気です。ちなみに今年(2019年)は水位の上昇が遅く、観光客をガッカリさせたり、これはこれで貴重だと喜ばれたり。
大正時代のはじめには、わずか3戸の入植者しかいなかったという上士幌町。旧上士幌線の開通前後に周辺の開発も進み、どんどん賑わっていったといいます。人が集まり、町が育ち、まさに生活文化が形成されていった時代でした。
そんな時代の流れと共に存在してきたタウシュベツ川橋梁も、今や崩壊するのを待つのみです。少しずつ朽ちていきながらも、なお荘厳で美しい。その姿は、私たちに何かを訴えかけているようでもあります。
取材協力
上士幌町観光協会
住所:北海道河東郡上士幌町字上士幌東3線238番地 上士幌町役場商工観光課内
電話:01564-7-7272
公式サイト:https://kamishihoro.info/
Facebook:https://www.facebook.com/visitkamishihoro
NPOひがし大雪自然ガイドセンター
住所:北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷北区44-3 糠平温泉文化ホール内
電話:01564-4-2261
公式サイト:http://www.guidecentre.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/nipe2013/