昭和12年に上士幌~糠平間、昭和14年に糠平~十勝三股間が開業した、国鉄士幌線。森の中を走る士幌線は、十勝北部の農産物や森林資源の開発にとって、大きな推進力となっていました。しかし、森林資源の枯渇や車社会の到来などにより、昭和62年にその役目を終える時が来ます。そんな旧国鉄士幌線の足跡として、今でも残っているのが鉄道橋として造られたコンクリートアーチ橋です。廃止されてなおその美しい姿を自然の中にとどめる14のコンクリートアーチ橋群、ひとつひとつを巡る旅にご案内しましょう。
本格的な山岳鉄道だった旧国鉄士幌線は、音更川の渓谷に沿っており、たくさんの橋を造る必要がありました。その際、工事費を抑えるために、現地の砂利や石を利用できるコンクリート製アーチ橋が採用されたのでした。アーチ橋は、大雪山国立公園の渓谷美に似合う形だということも、採用された理由のひとつだったといいます。今なお荘厳な美しさをたたえ、自然の中に佇むコンクリートアーチ橋群。国道273号線を南から北上するルートで、たどっていきましょう。
01:勇川橋梁
昭和11年完成。一連で橋長4メートルと小ぶりながら、ガウディの初期作品でもよく見られる、洗練されたラインのパラボラ・アーチが特徴的です。登録有形文化財。
02:第三音更川橋梁
昭和11年完成。橋長は71メートル。鉄筋コンクリートアーチ橋としては、北海道一の径間の大きさを誇ります。泉翠橋歩道より見ることができ、桜の景勝地に架かる橋としても有名です。登録有形文化財。
03:糠平第二陸橋
昭和30年完成。国道273号線から見ることもできますが、緑の生い茂る季節となると、木の陰になって見つけづらくなってしまいます。
04:下の沢陸橋
昭和30年完成。橋長は47メートル。
05:第二音更川陸橋
昭和11年完成。橋長は73メートル。音更川の断崖絶壁に沿っていて、さらには石積み護岸とコンクリートアーチ橋が調和し、なんとも美しい景観を織りなしています。
06:第四音更川橋梁
昭和11年完成。音更川に架かる鉄の桁橋が撤去され、分断されたような姿になっています。分断前の橋長は91メートル。残されたアーチの上には草木が茂って、森と同化していきそうな雰囲気。
07:中の沢陸橋
昭和30年完成。橋長50メートルの陸橋です。
08:糠平川橋梁
昭和30年完成。橋長は63メートル。ぬかびら源泉郷から散策するルート「小鳥の村散歩道(ネイチャートレイル)」の途中にあり、観光客にも親しまれています。登録有形文化財。
09:三の沢橋梁
昭和30年完成。橋長は40メートル。大型バスも駐停車可能な広い駐車場に隣接しているので、観光客でも訪れやすいと評判です。糠平川橋梁同様、橋の上を歩けるように整備されています。登録有形文化財。
10:五の沢橋梁
昭和30年完成。橋長7メートルの小さなコンクリートアーチ橋ながら、白樺橋より確認することができます。ただし、緑の多い季節には覆われて隠れてしまうかも。
11:タウシュベツ川橋梁
昭和12年完成。11連のアーチから成る、橋長130メートルの大きな橋です。詳しくは、トカチナベの記事へ。
▼ツアーに参加すれば近くで見ることも可能
12:第五音更川橋梁
昭和13年完成。国道273号線からもよく見える、橋長109メートルの大きな橋です。10メートルのアーチが連なる中、音更川をまたぐ箇所のアーチは23メートルにもなります。登録有形文化財。
13:第六音更川橋梁
昭和13年完成。橋長96メートル。以前は橋の下に降りることができ、そこから見上げる迫力の眺めが人気でしたが、今年(令和元年)7月中旬のニュースで崩落したことが伝えられました。しかし、6月5日の取材時にはすでに崩落していたことが、写真でも確認できます。登録有形文化財。
14:十三の沢橋梁
昭和13年完成。橋長58メートル。登録有形文化財。
以上、14のコンクリートアーチ橋群をご紹介しました。近くまで行って見られるもの、橋の上を歩けるもの、そして崩落しつつあるもの……。役目を終え、今なお残されたままの14もの橋は、それぞれの姿でそれぞれに何かを訴えかけているようでもあります。もしくは、そんな印象は人間の勝手な感傷で、ただただ、あるがままに佇んでいるだけなのかもしれません。実際に見て、何を思うか、足を運んでみてはいかがでしょうか。
取材協力
上士幌町観光協会
住所:北海道河東郡上士幌町字上士幌東3線238番地 上士幌町役場商工観光課内
電話:01564-7-7272
公式サイト:https://kamishihoro.info/
Facebook:https://www.facebook.com/visitkamishihoro
NPOひがし大雪自然ガイドセンター
住所:北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷北区44-3 糠平温泉文化ホール内
電話:01564-4-2261
公式サイト:http://www.guidecentre.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/nipe2013/
ライター、撮影:イシミスマサ