2019年4月に100年という節目を迎えた、上士幌のぬかびら源泉郷。「湯元館」は、そんなぬかびら源泉郷の歴史そのものと言っても過言ではありません。なぜなら、湯元館初代当主が鉱泉を発見したことで、すべてがはじまったのですから。その源泉は絶えることなく現代まで引き継がれ、今に生きる私たちを楽しませてくれています。さぁ、100年のロマンに浸るべく、湯元館を訪れてみましょう。
湯元館の初代当主・島隆美が後にぬかびら源泉郷となる鉱泉を発見したのが、大正8年のこと。未開だった土地を開墾し、島は大正13年に湯小屋を、そして翌14年には湯元滝の湯温泉旅館を開業します。
「湯元館」という名前は、その後に建てられた旅館から使われるようになったようです。現在の湯元館にも、もちろん100年前の源泉が現存しています。では、歴史のお勉強はこれくらいにして、さっそく湯元館へと足を踏み入れてみましょう。
現在、湯元館では離れにあるコテージの宿泊のみで、本館での宿泊は行っていません。とはいえ、素晴らしい泉質を誇る源泉かけ流しの温泉は、誰でも日帰り入浴で楽しむことが可能です。
湯元館の温泉は「空翠の湯」と「神韻の湯」の2種類あり、偶数日と奇数日で男女を入れ替えています。まずは空翠の湯から覗いてみましょう。
空翠の湯の内湯は、それほど広くはありません。しかしそこにひとたび身を投じると、浮き足立った心も沈殿していくような、なんとも穏やかな気持ちになれるから不思議です。
露天風呂に入ると、ぬかびらの大自然が目の前に広がっています。100年前に未開だったこの地を切り拓いた島隆美とは、なんとすごい人だったのだろうと改めて思いを馳せてしまいます。ちなみにトップ写真の檜風呂は、この露天風呂に隣接しています。また異なる趣きで、気分も変わりそう。
一方の神韻の湯は、広々とした楕円形の内湯が特徴的です。その横には、檜風呂もあります。泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。無色透明のさらさらしたお湯で、美人の湯とも言われているのだとか。
神韻の湯の露天風呂は、野趣溢れる造り。お湯に浸かりながら下を覗けば、川が流れています。違う季節に訪れたら、きっと周りの自然もガラリと表情が変わるのだろうなと想像をかき立てられます。
さて、現在は本館では宿泊できませんが、宿泊可能なコテージがあることを先述していました。本館のすぐ隣にあるログハウスが、そのコテージです。
2階建ての「やすら樹荘」は、その名の通り樹のぬくもりに包まれるような、安らげる空間になっています。電化製品や食器が揃ったキッチンスペースもあるので、家族連れにはうれしい施設です。
コテージ専用の内湯と露天風呂もあり、ちょっと贅沢な気分に浸れます。
100年という長きにわたって愛されるぬかびら源泉郷。そのはじまりである湯元館は、温泉好きならずとも近くを訪れたらぜひ入っておきたいところです。脈々と受け継がれてきた豊かな温泉に入れば、きっと日常の雑多なあれこれから、心も頭も解き放たれるはずですよ。