とかちの社窓から

2019.04.24 トカチナベ編集部

十勝のインフラを100年支える企業の新たな挑戦

十勝のインフラを100年支える企業の新たな挑戦

2018年に創立100周年を迎えた萩原建設工業株式会社(以下、萩原建設)。十勝の建設会社の中では最も長い歴史があり、18年8月には、十勝初の大規模フェス「TOKACHI ALIVE(トカチアライブ)」の開催や、大樹町でロケット開発を行うインターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)への出資など、新たな取り組みにも注目が集まっています。専務取締役の萩原一宏さんにお話を伺ってきました。

—堅いイメージの建設会社が、話題のアーティストが多数出演した本格フェス「TOKACHI ALIVE」を開催した理由

創立100周年を迎えるにあたり、2017年夏頃に社内で実行委員会を立ち上げました。当初は社員やその家族でバーベキューをして、お祝いできればと話していたのですが、せっかくなら「何か大きいことをしようぜ」という話になり。1人の若手社員が、「十勝でフェスがあったら面白いのに」と言い出したんです。もちろん、フェス運営の経験もノウハウもありません。「そんなのできるわけないでしょ」とみんなが思ったのですが、「誰もやらないことをやろう」と腹をくくって、話を進めることにしました。

TOKACHI ALIVE に出演したアーティスト

まずは、フェスを企画している協力会社に打診をしはじめました。しかし、十勝で前例がないことで難色を示されるばかり。 開催の目途はなかなか立ちませんでした。諦めかけた時に、札幌の夏フェス「JOIN ALIVE(ジョインアライブ)」を開催する「MOUNT ALIVE(マウントアライブ)」の協力を得られることになりました。

ただ、「関東だと5万人集まるアーティストが、十勝だと10分の1になる」といわれ、厳しいスタートとなりました。

出演者の決定から、当日の運営まで、何から何までが初めてで、準備は大変なことばかり。ただ、日に日に成功に向け、一生懸命動く若手社員と、それに吊られて盛り上げようと協力してくれたベテラン社員のおかげで、チケットも売れはじめ、飲食ブースの出展も埋まりました。

若手社員を中心に広報活動を開始
カウントダウンパネルは萩原建設建設の社員が日替わりで登場

―当日は、あいにくの悪天候ながらも、想像以上の盛り上がりを見せました。

お世話になってきた地元の方々へ恩返しをしたいと、サブステージから飲食まで、徹底して十勝にこだわりました。大雨の影響で、来られなかった方が多数いたのは残念でしたが、札幌などの十勝管外からの車も多く、十勝の魅力を伝える良い機会にもなりました。

終了後、フェスを企画した関係者からは、空港や駅からのアクセスが良く、運営がしやすかったと意外にもポジティブな意見をいただきました。

当日は、私もDJとしてステージに上がりました。社員のいる手前、私が目立つのは違うのではないかと、とても迷いましたが、私の仕事のモットーは、「自分が楽しめること、わくわくすることをする」ということ。自分自身が先頭を切って、その姿を見せることで、社員一人ひとりにもよい影響を与えられるのではと思い、ステージに立たせていただき、結果、観客の方々に盛り上げていただきました。フェス終了後には社内でも話題になり、会話が増えましたね。TOKACHI ALIVEを終え、社内のコミュニケーションは格段によくなりました。

―100周年事業の一環で、ISTへの出資も話題に。 建設業界としては異例の出来事ではないでしょうか

建設業界が必要とされる理由は、地域に人がいて、そこに生活や仕事、社会活動において建物を建てる必要性があるからです。建設業界には、行政などに寄付をするという慣例があります。でも、地域にいる人が行う「もっと夢のある事業」「住んでいてワクワクすること」に対して、私たちがアプローチして、何か支援できることがあるのではないかと考えていました。2013年に私が帯広に戻った頃、大樹町でロケット開発をしているベンチャー企業があるという話を聞き「これだ!」とひらめきました。

出資だけでなく、ロケットの打ち上げの際には、一般の方々が観覧するスカイヒルズの設営なども手伝っています。ISTの稲川社長をはじめ、社員の方々とは日々さまざまなやりとりをしています。萩原建設の歴史の中で培った人脈を生かし、ロケット開発以外の面でもサポートしています。

100年の歴史を背景に、組織は、良くも悪くも、どうしても保守的になります。

140人いる社員のうち、1人でも多くがチャレンジしよう、わくわくしよう、と感じる環境を作っていきたいと考えています。設立当初は、弊社にもベンチャー精神はあったはずで、ISTとの交流はとても刺激になっています。ゆくゆくは人材交流などの可能性も視野にいれたいです。

ロケット打ち上げの観覧会場

―ここ数年、十勝では災害が多発し、インフラ整備の重要性が増しているのではないでしょうか。

この数年は災害が相次ぎ、建設業界の一員として、十勝のインフラ強化への責任を感じています。2018年9月の胆振東部地震による停電では、近隣住民の方々のために社屋でスマホ充電用に電源を提供しました。もっとやれることがあったのではないかという反省もあり、今後いつ発生するかわからない災害に備えるため、できる限りの想定をし、食料の備蓄等、環境整備を再確認しています。災害はあってはほしくないですが、自分たちの仕事が地域の人の命や生活を担っているということを、身をもって実感するとともに、力不足を痛感しているところです。

萩原建設の100年の歴史の背景には、事故や災害で、大切な社員を亡くしたこともありました。そのような痛ましい過去にも目を背けずに、奮闘してくれた先輩方がいたからこそ、今の仕事ができているということを忘れず、地域のインフラを担っている自覚を持てる組織づくりを、今後も継続していきたいです。

-90年以上の歴史がある、帯広の双葉幼稚園は重要文化財にも指定されました。

双葉幼稚園は、初代萩原延一が建てたものです。普段は使われていませんが、100周年事業の一環でコンサート会場として活用させていただきました。当時はそれこそベンチャー精神の詰まった珍しい建物だったのでしょう。 現在、双葉幼稚園は国から、重要文化財の指定を受けましたが、資金不足により、耐震工事はおろか、簡易な修繕もできない状態です。個人的にも、曾祖父が建てたこともあり、何とか残したいと考えています。耐震工事にはかなりの費用がかかるため、資金調達の方法についても検討しなくてはなりません。課題は山積していますが、まずは地域の方々に双葉幼稚園の魅力を知ってもらうことが一番重要だと考えています。

引用:『HAGIWARA TIMES』 vol.11 2ページ目

―毎月発行している社内報「HAGIWARA TIMES」は公式ホームページから、誰でも見ることができます。とても読み応えがありますね。

社内報は写真の撮影から記事まで、社員自ら手掛けています。毎月1000部を印刷し、社員が取引先や官公庁、学校などを訪問し、配布しているんですよ。 建設中の建物や工事の紹介のほかにも、100周年事業や社員の表彰など、さまざまな話題を取り上げています。そもそも制作するきっかけになったのは、建設業界には、定期的に取引先を訪問し、名刺を置いて帰るという風習があります。しかし、営業担当が手ぶらで訪問しても話題は限られてしまいます。会話のきっかけになり、名刺代わりになる「何か」を作れれば、お客様との会話も増えるのではないだろうかと考えたのがきっかけでした。

引用:『HAGIWARA TIMES』 vol.12 表紙

建物を作るのはあくまでも「人」で、現場の社員にスポットを当てているのが社内報のこだわり部分。社内でもよく見られているようで、なかなか顔を合わせて集まる機会も少ない社員同士が、互いの仕事の内容を知るきっかけになっています。

引用:『HAGIWARA TIMES』 vol.20 vol.20 2ページ目

ハギワラタイムズはサイトから閲覧が可能
http://www.hagiwara-inc.co.jp/category/hagiwara-times

-最後に、節目の100年を迎え、今後の100年をどのように見据えていますか。

十勝は、個人が地域に与えるインパクトが大きいのが魅力だと感じています。

どういうことかというと、都会の多くの街よりも十勝は人口も企業も少ないです。少ないことは悪いことではなくて、声を上げれば注目してもらいやすくなるということです。音楽フェスを自分たちの手で開催しようという話は都会ではなかなかならない。参加することはあっても、自らの手で開催すると競合も多く、挑戦が埋もれてしまいますが、十勝では注目してもらいやすくなる、それは個人の活動においてもそうです。1人1人の小さなチャレンジが地域に与えるインパクトを大きくできると思うんです。

そんな十勝にある萩原建設の次の100年は、一人ひとりの社員が楽しいと思えることを形にする会社にしていけたらと考えています。「やらされ仕事」はつまらないですから。社員一人ひとりが、わくわくする仕事ができて、一人ひとりが地域に与えるインパクトを持ち、地域に貢献し続けていける会社にしていきたいですね。

萩原建設工業株式会社

萩原建設工業株式会社

代表者: 代表取締役社長 萩原一利
本社所在地: 北海道帯広市東7条南8丁目2
設立: 大正7年5月
従業員数: 140名
(写真は萩原一宏専務)

インタビュアー:坂本優子、坂口琴美
撮影:野澤一盛

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